起業するなら個人事業か法人どちらがいいのでしょうか?まずは個人事業から始めようと考える方も多いと思いますが、運営コストや税金はどのように違ってくるのでしょうか?この記事では、個人事業と法人の気になる違いをご紹介します。
1.個人事業と法人の違い

個人事業と法人とはそもそもどのように定義されているのでしょうか。
個人事業とは、個人で事業を立ち上げたりお店を経営することです。
経営者を個人事業主と呼びます。事業の種類は多岐にわたり、小売業や卸売業をはじめ、賃貸業や取引の仲介、運送、請負、加工、修繕、清掃、クリーニング、理容や美容、さらに医師、弁護士、公認会計士、税理士などといったものがあります。例えば、脱サラして独立したら税務署に開業届を出すことで、個人事業主として申告や納税ができるようになります。
法人とは、特定の目的のために設立され法律によって法人格を認められた集団のことで、団体名義での活動が可能になります。法人には4種類あり株式会社・合同会社・合資会社・合名会社という会社組織を設立できます。個人事業主が株式会社などの法人を設立することを法人化または法人成りといいます。法人成りすれば個人事業から法人へ資産や負債が引き継がれます。
個人事業主になるための手続きは簡単で開業届を出すだけですが、個人事業主になると確定申告が必要になり、1年間の所得税を計算し申告しなければいけません。確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類あり、青色申告は面倒ではあるものの控除額が大きく節税が期待できます。
法人には4種類あり株式会社・合同会社・合資会社・合名会社という会社組織を設立できますが、法人化を考える場合ほぼ株式会社か合同会社のどちらかになるでしょう。法人を設立するには個人事業と違って様々な手続が必要となります。
個人事業と法人の大きな違いは、納めるべき税金の種類が違う点です。
個人事業主は「所得税」「住民税」「個人事業税」「消費税」を支払う必要がありますが、法人は基本的に「法人税」「法人住民税」「法人事業税」「消費税」「固定資産税」「地方法人特別税(令和元年9月30日に廃止されます)」「 特別法人事業税(令和元年10月1日より開始されます)」を支払わなければいけません。
注目すべき点として、個人事業主の方が税金の種類は少ないですが所得が多くなると法人に比べ税率が割高になります。法人の方が税金の種類は多いですが場合によっては個人よりも節税できるという特徴があります。
個人事業と法人で所得金額に対しての税率が変わってくるため、利益が少ない起業直後は個人事業としてビジネスを始め、ある程度利益が増えてきた段階で法人化するという流れが一般的になっています。
個人事業主の場合、所得税は所得金額によって5%~45%まで変わります。高所得ならの所得半分を税金として納めなければいけないということですが、法人の場合は個人事業の所得税とは違って税率がそれほど上がりません。1年間の所得金額が同じでも、個人事業主だったら半分が税金になるところを法人なら節税できる可能性が十分にあります。
2.個人事業と法人それぞれのメリット

個人事業と法人で設立から税金まで様々な違いがありますが、起業するなら長期的に見てメリットのある方を選んだ方が良いですよね?
では、個人事業と法人にはそれぞれどんなメリットがあるのでしょうか?
個人事業のメリット
個人事業のメリットは設立費用がほぼかからない点です。開業届書は国税庁ホームページから無料でダウンロードできますし、提出方法は税務署に直接持参するか郵送のどちらでも大丈夫です。手続きに手数料は不要なため、法人に比べ事業を始めるハードルが低いのが特長と言えます。
さらに、個人事業は税金の計算が法人よりも比較的簡単です。個人事業主は確定申告時に納税しなければいけませんが、個人でも確定申告ソフトを使えば面倒な計算や書類作成も比較的簡単に行えます。
法人のメリット
法人は給与所得控除を利用できるというメリットがあります。給与所得控除とは給与に対して一定額の税金の負担を減らしてくれる仕組みです。サラリーマンは給与所得控除によって収入の一部の税金が免除されていますが、法人化すれば給与所得控除を自分(社長)も利用できます。
給与所得控除を利用すると所得税の節税が期待できます。例えば、個人事業主なら1,000万円の売り上げに対し経費が400万円かかった場合、約70万円が所得税となりますが、法人なら600万円を自分(社長)の給与にできるので給与から給与控除額174万円を引いた426万円が所得となり、所得税を計算すると約35万円となります。
これだけでも個人事業主に比べ35万円の節税になってます。
個人事業も法人も赤字を繰り越す事ができますが、個人事業主の場合は3年間のみ、法人の場合は最大9年の繰越しが可能です。誰も損失を出したいとは思いませんが最大9年間の繰越しが出来る法人は大きなメリットです。
さらに、法人なら家族に役員報酬を支払う事ができるというメリットもあります。例えば、自分(社長)が1人で全額を受け取るのではなく、妻や子供に役員報酬を支払う事で所得を分散させると、一人当たりの所得が減るので所得税の税率を抑える事ができます。家族全体の収入は変わらずに税金を抑える事ができるということです。
個人事業であれば仕事をやめたとしても退職金を受け取ることはできませんが、法人であれば会社から自分や家族従業員に退職金を支給できます。退職金は退職所得になり退職所得控除が適用されますし、退職金は分離課税になり税金は給与所得と分けて計算されるので節税になります。
法人のもう一つのメリットは信用度が高い点です。個人事業を始めたばかりであれば、実績がないため銀行からの融資を受けれなかったり、クレジットカードを作れなかったりします。しかし、法人であれば信用度が上がるので早期に事業を大きくしていきたい場合、取引や採用面でも個人事業との差が出てくるでしょう。
3.まとめ
個人事業と法人はどちらが良いというわけではなく、それぞれメリットがあります。個人事業なら届出も簡単で設立費用もかかりません。ある程度の利益があるのであれば法人化を検討するメリットも大いにあります。まずは、個人事業と法人の違いをよく理解した上で自分のビジネスプランに合う方法を選んでいきましょう。















