個人事業主や法人は赤字になったらどうする?納税の違いについて解説!

個人事業主や法人は赤字になったらどうする?納税の違いについて解説!

できればあまり考えたくはないですが、もしも赤字になってしまったらどうすればいいのでしょうか?

確定申告は必要でしょうか?この記事では個人事業主と法人で赤字が出た場合の納税方法と納税時の注意点についてご説明します。

1.個人事業主が赤字になった時の納税注意点

個人事業主が赤字になった時の納税注意点

個人事業で赤字になってしまっても利用できる補助制度があり、きちんと処理すれば赤字を黒字で相殺することができますし、払いすぎた税金の還付を受けることもできます。赤字を相殺する「損益通算」と赤字を繰り越せる「損失申告」についてご説明します。

赤字を相殺する「損益通算」

売上から必要経費を差し引いた金額が所得になりますが、事業所得が赤字になってしまった場合は、まず他の所得で赤字を相殺できるかどうかを調べましょう。この方法を「損益通算」言います。

どんな所得でも赤字を相殺できるわけではなく、損益通算ができる所得は事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の4つに限られています。つまり事業所得で赤字が出ても、不動産所得が黒字なら通算して赤字を相殺することができるという事です。

もし損益通算しなければどうなるでしょうか?例えば、事業所得が500万円の赤字で不動産所得が500万円あった場合、単純計算で実際の利益は0円ですが、損益通算していなければ500万円に所得税がかかります。利益はないのに税金は支払わなければいけないという恐ろしい状況になってしまうわけです。そこで、損益通算を行えば赤字を相殺する事で節税することができます。

赤字を繰り越せる損失繰り越し

もし「損益通算」を行っても赤字が相殺できない時はどうなるのでしょうか?この場合は「損失申告」する必要があります。損失申告をすれば赤字を翌年に繰り越すことができ、最大3年間繰り越せます。繰り越すした赤字は黒字で相殺できるので、損益通算と同じように納税額を減らせます。ただし、制限のなく赤字を繰り越せるのは青色申告した場合のみですので、開業時もしくは開業日から2ヶ月以内に「所得税の青色申告承認申請書」提出を忘れないよう注意してください。

純損失の繰り戻し

赤字を翌年度以降の黒字で相殺する方法について紹介しましが、前年度の黒字で今年度の赤字を相殺するという方法もあります。この方法を「純損失の繰り戻し」と言いますが、純損失の繰り戻しをした場合、税金の還付を受けることができます。

例えば、前年度は500万円の所得があったのに今年度は500万円の損失が出てしまったとしましょう。そのまま何もしなければ税金を支払う必要はありませんが、純損失の繰り戻しをすると前年度の黒字で今年度の赤字を相殺できるので「500万円−500万円=0円」となり、前年度も所得がなかったことになります。そうなるとすでに支払っている所得税が還付されるのです。

この方法は赤字損失を繰り越すより良さそうに見えますが、実際に還付されるのは所得税のみで、住民税や復興特別所得税などは還付されません。そのため還付金額がそれほど多くない上に、繰り戻し還付の申請をすると税務調査があるため時間も取られてしまいます。翌年以降に黒字になる見込みがあるのなら、損失申告をして赤字を繰り越した方がいいかもしれません。

2.法人が赤字になった時の納税注意点

法人が赤字になった時の納税注意点

法人が個人事業と大きく違う点は、赤字になっても税金を支払わなくてはいけないという点です。個人事業主であれば赤字であれば税金を支払う必要はありませんが、法人の場合「消費税」「法人住民税」「法人事業税」などは赤字に関係なく課税されてしまいます。

・消費税
例えば、「消費税」とは消費者から一旦税金を預かっている状態なので、赤字であったとしても納税しなくてはいけません。ただし例外もあり、消費者から預かる消費税よりも法人が仕入れ等で支払った消費税の方が多ければ納税は不要となります。

・法人住民税
「法人住民税」は法人税割と均等割から構成されていますが、均等割は資本金や従業員数によって納税額が決まるので赤字であっても納税しなければいけません。

・法人事業税
「法人事業税」資本金が1億円を超える法人には外形標準課税の適用されますが、外形標準課税の一部は資本金額をもとに算定されるので赤字に関係なく課税されます。

このように、法人は個人事業と違い、たとえ赤字だったとしても一部の税金を支払わなければいけませんが、法人も赤字を黒字で相殺することは可能です。

赤字の損失繰り越し

法人も赤字を翌年以降に繰り越すことができます。この精度のことを「欠損金の繰り越し控除制度」といいますが、個人事業なら最大3年だった繰り越し期間が法人なら最大10年間も繰り越しが可能です。

ただし、「欠損金の繰り越し控除制度」を利用するためには赤字になった事業年度に青色申告をしていて、尚且つ毎年連続で申請している必要があります。

中小法人以外の法人は繰り越し控除する事業年度によって控除限度額が決まっているので注意しなければいけません。中小法人とは資本金または出資金が1億円以下か資本金または出資金がない場合を指します。

純損失の繰り戻し

赤字を前年度の黒字で相殺し、前年度に支払った税金を還付する「欠損金の繰戻しによる還付制度」というものがあります。これは、今のところ災害損失欠損金の場合を除いて、解散等による欠損金と中小企業者等の欠損金のみに適用が認められています。しかも還付されるのは前期に支払った法人税と地方法人税のみで、その他の住民税や事業税などは税金の還付を受けることはできません。

3 .まとめ

個人事業も法人も赤字が出てしまった時に相殺する方法がありますが、条件や納税する額には違いがあります。例えば、個人事業主は赤字を3年間繰り越せるのに対し法人は10年間繰り越すことができますが、法人は赤字であっても一定額の納税義務があります。

共通して言えるのは、個人事業でも法人でも青色申告を連続して行なっている必要がありますので、思わぬ赤字にも対応できるように毎期青色申告をしておくことが大切です。

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