法人が納める税金と言えばまず法人税を考える方も多いと思いますが、その他にも法人が納めるべき税金には多くの種類があります。法人は個人事業よりも税金の種類が多いので、どんな税金を納めなければいけないのかわかりにくいかもしれません。このサイトでは、法人税金の種類と注意点についてご説明します。
1.法人税金の基本的な種類
法人になって事業を始めたら、「法人税」「法人事業税」「法人住民税」「消費税」「固定資産税」「印紙税」「登録免許税」などを納めなければなりません。それぞれの違いを見ていきましょう。
・法人税
法人税とは国税のひとつですが、正確には「各事業年度の所得に対する法人税」「各連結事業年度の所得に対する法人税」「退職年金等積立金に対する法人税」の3種類に分かれます。
一般的に法人税というと「各事業年度の所得に対する法人税」のことを指します。これは法人が得た1年間の利益から費用を引いた所得に対して課される税金です。個人に課せられる所得税と同じようなものだと考えるとわかりやすいかもしれません。
税率は資本金や所得によって変わってきます。例えば、資本金が1億円以上の場合の税率は23.2%となります。しかし資本金が1億円以下の中小法人の場合、年間の所得が800万を超えた部分には23.2%の税率が課されますが、所得が800万以下の分の税率は15%となります。
「各連結事業年度の所得に対する法人税」は「各事業年度の所得に対する法人税」に代わってグループ企業全体で申告する場合の法人税です。全ての子会社を対象に「連結納税制度」と呼ばれる制度で計算し、親会社が申告及び納税します。この場合、子会社も必要書類を税務署に提出する必要があります。
「退職年金等積立金に対する法人税」とは、退職年金業務等を営む信託会社や保険会社などに対して課される法人税のことです。信託会社や保険会社では、法人から退職年金の払込みがあった年度に掛け金が計上されますが、実際には従業員が退職し年金を受け取った時に課税されます。
・法人事業税
法人事業税とは登記している地方自治体から法人に課されている税金です。法人税は「法人の所得×法人事業税率」で計算しますが、各都道府県によって税率は違うので必ず会社の登録をしている都道府県のホームページ等で詳細を確認しておきましょう。
法人事業税は主に法人が事業を行うために利用している道路や消防、警察など公共サービスや施設の経費を一部負担する事が目的で課税されています。
例えば、東京都なら税率は所得に応じて3段階に分かれていて、所得が400万円以下であれば3.4%、400万以上800万以下であれば5.1%、800万円以上であれば6.7%となっています。法人事業税の特徴として、損金算入が可能で、赤字の場合は納付する必要はありません。
・法人住民税
法人住民税とは「法人都道府県民税」と「法人市町村民税」の総称で、都道府県と市町村に納める地方税です。地方自体の公的サービスを利用している法人の事務所がある地方自治体に課税されます。納税額は「法人税割」と「均等割」の合計となります。どちらも国によって基本税率は定められていますが、地方によって税率が異なりますので必ず地方公共団体の税率をご確認ください。注意しなければいけないのは、たとえ赤字であっても法人住民税を支払う義務があるという点です。
・消費税
消費者が何かを購入した時に支払う義務があるのが消費税ですが、消費者は直接税務署に消費税を払っているわけではなく、物やサービスを販売している事業者が一旦消費税を預かりまとめて国に納付します。
・固定資産税
会社の有価償却資産となる固定資産(土地や建物など)に対して課税される税金です。そのほかにも耐用年数が1年以上で取得価格が10万円以上のパソコンやエアコン、看板なども償却資産とよばれ固定資産に含まれます。固定資産税の税率は基本的に1.4%とされていますが、地域の財政状況によっては引き上げられることもあります。
・印紙税
印紙税とは、領収書や契約書など所定の文書に収入印紙を貼って納める国税です。課税の対象になる文書の種類や税額は、国税庁のホームページに詳しく記載されています。
・登録免許税
会社を設立するには登記が必要になりますが、法人に関する商業登記や不動産登記を行う時に収めるのが「登録免許税」と呼ばれる国税です。収入印紙を購入して納付するか、登記申請前に法務局が指定する銀行口座に現金を振り込む方法かを選べます。
2.「地方法人特別税」と「特別法人事業税」に注意
地方法人特別税は、地域間の税源格差を均等にするため法人事業税と併せて申告納付する国税の一つでしたが、都道府県ごとに違っていた税率を均一化させるために 令和元年9月30日に廃止されることとなりました。
地方法人税の廃止に伴い、新しく「特別法人事業税」が創設され、令和元年10月1日以降より適用されます。これまでは地方ごとに「地方法人特別税」が課されていたため各地方で税率が違っていましたが、「地方法人特別税」を廃止し法人事業税の約3割を「特別法人事業税」にすることで、地方ごとの税率の差をなくすという措置です。
令和元年9月30日に「地方法人特別税」は廃止されますが納税額が減るというわけではなく、納税者からするとその分を「法人事業税」と合わせて都道府県に納付するだけなので会計上は大きな問題にはならないでしょう。
ただし、令和元年9月30日までに開始する事業年度の申告等については、地方法人特別税を支払う必要があるので注意しましょう。
3 .まとめ
法人は個人事業に比べ税金の種類も多く、「法人税」「法人事業税」「法人住民税」「消費税」「固定資産税」「印紙税」「登録免許税」などを納めなければなりません。
しかし税金を正しく理解すれば個人事業時よりも節税できる可能性があります。 都道府県によって税率が変わるものもありますし、新しく創設された「特別法人事業税」も令和元年10月1日以降より適用さるので、今後の変化にも柔軟に対応できるよう最新の情報に注意しておきましょう。