法人化することを法人成りとも言います。事業が軌道にのってくるとさらに節税するために法人化しようかと悩む個人事業主は少なくありません。確かに法人化すると多くのメリットがありますが、タイミングを間違えると逆にそれほどメリットは感じられません。ではいつ法人化するばいいのでしょうか?この記事では法人化のタイミングをご説明します。
1.法人化のメリットと注意点
法人化するとどんなメリットがあるのでしょうか?簡単に言えば法人化は節税になります。なぜなら、個人事業主と法人で支払わなければいけない税金が変わるからです。ただしタイミングを間違えると法人化してもあまり節税にならないばかりか、逆に税金が増えてしまう場合もあります。
法人化は節税以外にもメリットがあります。万が一赤字になってしまっても法人なら赤字を最大10年繰越せるので、その間に損失を取り返して黒字にすれば問題ありません。 個人事業主の場合赤字を繰り越せる期間は3年間のみです。
個人事業主は所得税を支払う義務がありますが、所得税は所得金額が増えれば税率も高くなります。しかし法人であれば家族に役員報酬を支払う事で、自身の所得を減らすことができるため個人事業よりも税率を下げれます。
さらに、退職金を受け取れることも法人化の大きなメリットです。個人事業は退職金を受け取ることはできませんが、法人なら会社から自身に退職金を支給できるようになります。
法人化すれば様々なメリットがありますが、すべての個人事業主が法人化した方が良いわけではありません。法人化はゴールではなくこれからどんな状況でも会社を維持成長させていかなければなりません。個人事業であれば一度会社をたたんで別の事業を始めるということもできますが、法人はそう簡単にはできません。法人化するタイミングはよく考えて決めた方が良いということです。
2.個人から法人化するベストなタイミング
個人事業から法人化するタイミングは決まってはいません。事業が軌道に乗ってきたら早い段階で法人化する人もいますし、慎重に様子を見ながら安定してから法人化した方がいいという見方もあります。とはいうものの目安がなければ判断のしようがありませんので、以下を参考に法人化するベストなタイミングを考えましょう。
売り上げが1000万を超えたタイミング
「課税事業者」と「免税事業者」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?個人事業主は基本的に消費税を納税する義務がありますが、条件によっては「免税事業者」、つまり消費税の納税が免除される場合があります。
課税事業者か免税事業者かは「基準期間」と「特定期間」の課税売上高の金額で決まります。
・基準期間
基準期間とは該当年の前々事業年度のことです。課税売上高とは消費税が課税される売上高のことで、基準期間内の課税売上高が1,000万を超えると納税義務が発生します。
・特定期間
前年度の6ヶ月の期間のことです。法人なら期首から6ヶ月間で個人なら前年の1月から6月までの期間となります。基準期間内の課税売上高が1,000万を超えると納税義務が発生します。
つまり、売上げが1,000万を超えた時が法人化を考えるタイミングと言えます。例えば、個人事業の基準期間の課税売上高が1,000万を超えた場合そのまま法人化しなければ「課税事業者」となりますが、法人化すれば個人事業の売り上げはカウントされないため免税事業者と判定されます。
もちろん翌々年度から課税事業者となりますが、法人化することで免税事業者の期間を伸ばせるということです。
所得が増えたら法人化のタイミング
法人化を考えるべきもう1つのタイミングは所得が増えてきた時です。所得とは収入から必要経費を差し引いた金額です。
個人の場合、所得によって「所得税」を支払い、法人は「法人税」を支払います。所得が少ないうちは「所得税」の方が税率は低いですが、所得が増えてくると「法人税」の方が税率が低くなるので税率の損益分岐点をよく見極めなければいけません。
もし所得がそこまで多くないのに法人化してしまえば高い法人税を支払うことになってしまいます。逆に所得が増えてきたのに個人事業のままだと高い所得税を支払い続けることになります。
ではどのタイミングで法人化すればいいのでしょうか?所得がいくらになったら法人化するかは税理士や専門家でも意見が分かれるところです。
あくまで参考として、所得が400〜500万円になったタイミングで法人化するという意見があります。これは所得税と法人税を比較し納税額の差を調べると、所得が400〜500万円になったあたりで法人税の納税額が少なくなるからです。しかし、法人化するタイミングは社会保険料や法人事業税など様々状況を見て各個人事業者がよく分析した上で判断するべきでしょう。
3 .まとめ
個人から法人化のタイミングに絶対はありません。各個人事業主がベストなタイミングを見極める必要がありますが、まずは個人事業と法人のメリットをしっかりと比較することから始めましょう。
一般的に課税売上高が1,000万を超えた時と所得が400〜500万円になった時が法人化を考えるタイミングと言われています。このタイミングを目安に自身の事業を分析しベストなタイミングを見極めましょう。